読んでみると自分が今まで読んだ派生作品と比べると随分受ける印象が違う。巻末解説から予想するにダーレス以降が作り出した神話大系が今日のクトゥルーと呼ばれるものの大部分であり、それはラヴクラフトの作品と僅かにしか結びつきがないのだろう。ぼくもダーレスが善悪二元論の単純な形式にラヴクラフト作品を落とし込んで、それがクトゥルーの持つ元の性質を単純化し、大衆的に受けるようなことにしてしまったという話はどこかで読んだことがあった。そしてそれが所謂ダーレスの功罪と言われ続けていると。だからそのこと自体はわかっていたんだけど、説明を聞いて形式的に理解するのと実際に手を触れてみて体感的に理解するのは別だし、やっぱりいつかはクリアしなくてはならないタスクだった。
作品自体については殆どが面白いとは思えない。勿論恐怖感は皆無。ぼくが本を読み終わった後にあまり内容を吟味しないで感想を投稿しているサービスの読書メーター【読書メーター - Kenさんの読書メーター (http://book.akahoshitakuya.com/u/850)】でも「つまんねー」と言い続けていたくらい。一つは冗長に感じることがあって、単純に文章がすごく面倒。次に恐怖や嫌悪の感じ方が納得し難かったり説明不足だったりすることがありすぎて、イマイチ感情移入できなかったというのがある。勿論、第一巻収録の中篇「インスマスの影」などはSFでなければ問題解決ができなさそうな明確な生物学的変異が一種の病理への恐怖として理解できるといったように、いくつかは納得できるものもあった。しかしギャグかと思うようなものもかなり多くて、この作家がどうしてここまで評価されるようになったのかということについては体感できなかった。
こんな感想が殆どを占めてしまうが、面白いと言えるものもある。第六巻収録の「銀の鍵の門を越えて」がそれで、他のラヴクラフト作品とはかなり毛色が違うけどすごくいい。この巻は元祖(じゃないと思うけど、ラヴクラフト以前の作家として)「ぼくが考えた神々」のダンセイニから影響を受けた通称「ダンセイニ風掌編」及び関連するランドルフ・カーターを主人公とする作品が収録されている。ちなみにこの巻もそれなりにギャグは多い(調子乗りすぎなバルザイや強すぎて笑える猫たち)。「銀の鍵の門を越えて」は同書収録の「銀の鍵」のスピンオフで、キーアイテムの銀の鍵を用いて別の時空間への旅をしたカーターが出会う高次元の知性体の語る様がまさにSFのそれであり、全集を読んでる間にずっとSFを断っていたこともあってかなり興奮した。次点では「狂気の山脈にて」や「ファラオとともに幽閉されて」があるが、前者は地理的検証の正確さ、後者はエジプトという舞台の新鮮さという点あたりしか評価できず、水準を超えるものではなかく、やはり自分の中では「銀の鍵の門を越えて」は突出した作品として印象付けられた。
H・P・ラヴクラフト
東京創元社 ( 1974-12-13 )
ISBN: 9784488523015
東京創元社 ( 1974-12-13 )
ISBN: 9784488523015
H・P・ラヴクラフト
東京創元社 ( 1976-08-20 )
ISBN: 9784488523022
東京創元社 ( 1976-08-20 )
ISBN: 9784488523022
H・P・ラヴクラフト
東京創元社 ( 1984-03-30 )
ISBN: 9784488523039
東京創元社 ( 1984-03-30 )
ISBN: 9784488523039
H・P・ラヴクラフト
東京創元社 ( 1985-11-29 )
ISBN: 9784488523046
東京創元社 ( 1985-11-29 )
ISBN: 9784488523046
H.P. ラヴクラフト
東京創元社 ( 1987-07-10 )
ISBN: 9784488523053
東京創元社 ( 1987-07-10 )
ISBN: 9784488523053
H・P・ラヴクラフト
東京創元社 ( 1989-11-24 )
ISBN: 9784488523060
東京創元社 ( 1989-11-24 )
ISBN: 9784488523060
H・P・ラヴクラフト
東京創元社 ( 2005-01-22 )
ISBN: 9784488523077
東京創元社 ( 2005-01-22 )
ISBN: 9784488523077







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