感想を何度か書き直してみてるんだけれど、上手くまとまらなかったので簡潔に。
攻略はみちる、幸、蒔奈、天音、由美子の順に行ったが、みちるをプレイした段階で買って良かったと感じた。これはみちる編からやったからというのもある。各ルートで十分に楽しめたのはみちる編と蒔奈編で、他の三人に関してはあまり高い評価は出来ない。
みちる編ではキャラクターの魅力が上手く表現できていて、純粋に彼女の幸せな笑顔を見せてくれるシナリオが良かった。画と声も最上級と言って過言ではないだろう。設定は凝ってるケド、やってるコトはエロゲーのオーソドックスなパタン。それでいてここまで魅力的に描かれているのだから文句はない。蚕食される己の価値というものに耐えきれず、逃走を選択してしまったのは過去の記憶があったからだろうし、依嘱できる存在が自己の中にあったからに過ぎない。彼女の問題の本質は彼女にしか捉えることが出来ず、他者からすればミニマムな問題でも本人からすれば極めて負担であったのだろう。これは言葉だけなら容易に想像できるが細部までとなると誰も踏み込めない。イマイチ重さの解り難いシナリオではあったが、客観的にそれが観測できない主観問題であるのでそれは仕方ないことだ。みちるの存在を彼女以外の存在と共に願えたというだけで、とりあえずではあるが十分だとは思う。
蒔奈編はみちると幸を攻略し終えて、そこまで重い展開はないだろうと甘く見ていたトコロにガツンと不意を食らった感じ。本作の中でも非常に重い内容ながら、そのストーリーの強さに負けないくらいにキャラクターに愛着を感じさせるやり方が丁寧だと感じた。親子であり師弟であり男女でありという複数の関係を形作り、互いの必要性を強く感じさせる。生活の中で自然に信頼を重ねていく様は、天音が語ったように蒔奈が自分から雄二に願いを伝えたことから始まり、さらに雄二も蒔奈の覚悟を確りと感じとって、互いにこれからの行く末に覚悟を予め決めていたからこそ描かれるものなのではないだろうか。結末ももの悲しいが、しかし蒔奈による独白、青空と海の背景、穏やかなピアノ曲、そして銃声での閉幕はその切なさを非常な程に高めてくれて、単なる善性とは違った気持ちよさを与えてくれる。これは果断だろう。明確な幸福よりも、ほんの少しだけでも悲しさややるせなさが居残っていた方が、物語の馥郁たる香を感じ取ることができるという場合の好例だ。普段のぼくなら主観で幸福であればそれは誰も文句が付けられないことであり、更にその人物の狂気が外界からの影響を拒んで強固な自己中心の世界を形成しているなら、他者がどれほど不幸だと思おうがそれは押しつけでしかないと言う。9029を継いだ蒔菜が彼女にとっての幸せを感じているなら、プレイヤーもそれを受け入れるべきだろうし、殊に普通の幸福というものが得られなくてもそれは決して不幸ではないと麻子が雄二を育てたこと、そして雄二が蒔奈を育てたことを鑑みれば尚更である。どうしても学園生活が幸せであり、それが悪意に摘み取られてしまったという前提があって、しかも蒔奈がそれぞれのEDで一言だけ語る「頭の中で騒がれると~/今日はまだ、頭は痛くない。」があの風景の中にも主観的な歪みを抱えていることがわかってしまうのがプレイヤーにも痛みを感じさせる。そしてそれがナントモ言えない読み応えをもたらしてくれる。
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