2010年12月1日水曜日

<S-Fマガジン>二〇一〇年二月号

S-Fマガジン 2010年 02月号 [雑誌]


 前号に引き続き「創刊50周年記念特大号」のPART・Ⅱで日本SF篇でかなりボリューミー。日本人作家は海外作家よりも知らない人が多いので、カタログ的な読み方も出来た。既に読んだことがあって気に入っている作家は神林長平と上田早夕里。堀晃がいないのが残念です。既に読んだことがあって気に入っていない作家は……これは触れなくていいか。単品コメントでは触れてしまっているかもしれないけれど。日本人の作家は円城塔は別として「わけがわからない……」状態にならないので一応全てそれなりに楽しめるところが良い。好き嫌いは別の話になってしまうけれどね。ともかく、わけわかめな状況に陥らない安心感がある。


●p4 第21回「SFマガジン読者賞」発表

――内約

海外部門:
 一位 パオロ・バチガルピ「フルーテッド・ガールズ」(中原尚哉訳)二月号掲載
 二位 グレッグ・イーガン「暗黒整数」(山岸真訳)三月号掲載
 三位 バリントン・J・ベイリー「蟹は試してみなきゃいけない」(中村融訳)五月号掲載
 四位 チャイナ・ミエヴィル「鏡」(田中一江訳)八月号掲載
 五位 アンドレイ・サロマトフ「祝宴」(宮風耕治訳)十月号掲載

国内部門:
 一位 新城カズマ「雨ふりマージ」十月号掲載
 二位 山本弘「地球移動作戦」連載第七回~最終回(九月号)
 三位 伊藤計劃「屍者の帝国」七月号
 四位 谷甲州「星魂転生」十月号掲載
 五位 樺山三英「小惑星物語」二月号掲載

イラストレーター部門
 一位 田中光
 二位 シライシユウコ
 三位 鷲尾直広
 四位 尾関裕隆 / スカイエマ

 海外部門ではバチガルピが一位。なるほど、先月号の「第六ポンプ」も面白かったし、伊達じゃないってことでしょう。邦訳本の刊行が待たれるところ。イーガンとミエヴィルは上位に食い込むのが当たり前の作家なので、特に驚きはないですが、五位を受賞したアンドレイ・サロマトフという名前は初めて聞きました。日本語では殆ど情報がないのですが、どうやらロシアのお人らしく。邦訳刊行は期待できずとも、せめて英語に翻訳された本があればなぁと思います。そんなに読みたきゃロシア語なり何なり勉強しろってハナシですが。


●p10 飛浩隆「零號琴」(連載第一回)
紹介文:
都市をまるごと覆う巨大楽器の秘密とは?――超特大総天然色活劇、新連載開始!

 導入なのに既に面白い件。異種知性体が残したオーバーテクノロジーの類を扱ってこれからどんなことが起きるのか期待。どことなく漂うオリエンタルな雰囲気もツボを突いている。

 作家詳細:
 【飛浩隆 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9B%E6%B5%A9%E9%9A%86)】


●p34 山田正紀「フェイス・ゼロ」
紹介文:
人形浄瑠璃の人間国宝が夢見た究極の表情とは? そしてそれが実現したとき……。

 人形浄瑠璃とロボット工学と表情に対する認知を主題にした作品。単純に昔の言葉って格好良いよな。「根ざしはかくと知られけり」とか。
 SFとしても一応通用するけど、主な内容としては怪奇小説とかサイコサスペンスとしたいところ。ガジェットの〈フェイス・ゼロ〉はまさにホラー小説のガジェットが与える恐怖であり、SF的面白みがあまりない。

 作家詳細:
 【山田正紀 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E6%AD%A3%E7%B4%80)】


●p52 椎名誠「問題食堂」
紹介文:
定食屋「いたみや」の常連であるおれの前にそいつは身の程知らずにも現れたのだ!

 これはないわー。基本となるシチュエーションを、背景を変えて何度も上演するという作品だが、どうにも面白さがわからん。要するに、【ラヴクラフト風味の『侵略!イカ娘』文章記述 :Syu's quiz blog (http://www.syu-ta.com/blog/2010/11/12/222011.shtml)】みたいなネタ系だとは思うんだけれど、冗長かつ興味が沸かない。

 作家詳細:
 【椎名誠 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%8E%E5%90%8D%E8%AA%A0)】


●p70 瀬名秀明「ロボ」
紹介文:
ぼくはウィニペグに向かった。自然史家となった、かつてのロボット画文家に話を聞くために

 『パラサイト・イヴ』の作者で、日経サイエンスでも呼ばれていたりしているお人。初めて読む。良い。

 作家詳細:
 【瀬名秀明 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%80%AC%E5%90%8D%E7%A7%80%E6%98%8E)】


●p90 上田早夕里「マグネフィオ」
紹介文:
昏睡状態の夫の内面を知るために、妻の取った選択とは――。

 上田早夕里は『魚舟・獣舟』が面白かったので安心できる作家。今回もそれなりに愉しませてくれたが……うーん。
 人工神経細胞を利用した生体チップをアタマに埋め込んで、感覚記憶を特定のトリガーにより再現させる。そんなことをしなくても普通に記憶を再現することは可能だが、その感覚強化はより精密にその感覚を蘇らせることができる。こういうガジェットは好きだが、それは未来のこととして話に出るだけで、実際は劇中では用いられない。個人的な好みの話ではあるが、感覚を再現させた人物が、それが現実の感覚であるか人工の記憶であるか判別不能になるわけだから、作中の視点をめちゃくちゃにしてわけわかんないようにして欲しかった。認知感覚を弄くるのを内面から書かないなんて勿体ない。外面から弄ればホラーにはなるんだけどね。

 作家詳細:
 【上田早夕里 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E7%94%B0%E6%97%A9%E5%A4%95%E9%87%8C)】


●p116 谷甲州「航空宇宙軍史 ザナドゥ高地」
紹介文:
男はタイタンのザナドゥ高地を再訪する――航空宇宙軍史、十五年ぶりの新作登場

 長い劇の一つの段落として見たら十分に読めたし愉しませてもらったけれど、《航空宇宙軍史》シリーズを読んだことがないので何とも。ちょっとだけ《雪風》っぽい。未読者に長編シリーズに取りかからせるにはもうワンパンチ足りないかと。

 作家詳細:
 【谷甲州 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B0%B7%E7%94%B2%E5%B7%9E)】


●p136 牧野修「小指の思い出」
紹介文:
そこは老人だけの島。朦朧とした記憶をたよりに、妄執に駆られた男が一人訪れる。

 老人モノ。このジャンル誰得だよ。
 現代日本が抱える高齢化問題やらそれに伴う年金問題とかをもっと扱ってもらっても良かったような気がするけれど、あくまで内容は一人の男の復讐譚。

 作家詳細:
 【牧野修 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A7%E9%87%8E%E4%BF%AE)】


●p174 Media Showcase ANIMATION
 小林治が“固定イメージを打ち砕いてくれる2本”として『あにゃまる探偵キルミンずぅ』と『聖剣の刀鍛冶』を紹介。どんな固定イメージだ。


●p177 SF BOOK SCOPE
 香月祥宏の紹介する川端裕人『算数宇宙の冒険 アリスメトリック!』は誉めていいのか。“作者が最新の理論を理解した上で、さらなる飛躍や解釈を加えるタイプの作品とは違い、わからないところはわからないまま、想像力を駆使して、数学への憧れのようなものも含めて小説家しているところがおもしろい”って、単純なリサーチ・知識不足で書かれたってことじゃないか。
 卯月鮎の紹介ではブックオフの105円棚にあっても避けていた『シュガーダーク 埋められた闇と少女』は読みたくなってきた。今度見つけたら、という程度のプライオリティではあるが。墓を掘る仕事をしていたらいつの間にか墓穴に怪物の屍体が入ってました、なんてどうしても気になっちゃうじゃないか。
 あとはタニグチリウイチが紹介している瀬尾つかさ『円環のパラダイム』はそのうち読もうと思っていたし、三村美衣が紹介する『ラウィーニア』はアーシェラ・K・ル=グウィンなので言われなくとも勝手に読むであろう作品。
 牧眞司が紹介している純文学系の小説『エクスタシーの湖』は気になるところ。手法のごった煮感に振り回されてみたい。
 ノンフィクション系では森山和道が紹介する石黒浩『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』がベタながら気になる。わざわざ読むまではないと思うけれど、感じるところはあった。これはロボット研究を通して人間について改めて考えたことを記したものらしい。認知科学的に人間を研究する分野とロボット研究は相互作用し合うものなんだと思う。例えばデネットの『解明される意識』で載っていたシェーキーとかね。AIまでいかなくても、特定の人間の認識能力、つまり視ることだとか聞くことなんかをロボットの入力としてシミュレーションしようとすると、当然人間が普段自然にこなしている認識というものはいったいどういう仕組みなのかということを考え出す。引用の引用になりそうだけれど、このレビューでは“著者によれば、人間に心があるかどうかはわからないが、人間は互いに相手に心があると信じて振る舞っており、それによって社会が生まれ、また社会によって自己が生まれているのだということになる。人は全ての能力を機会に置き換えたあとに何が残るのかを見ようとしており、そんなことをし続けてきた「人間」とはどういうものか理解するために格好の存在、それが「ロボット」なのだという”とあり、なかなか納得できるところ。ホフスタッターやデネットとはまた違ったアプローチが見えるならば読んでみたくはある。


●p188 Media Showcase
 宮昌太朗の紹介でアトラスの『ユグドラ・ユニゾン』が載っている。おもしろいSRPGという紹介だけど、この時期にSRPGの紹介としてこんなものを読んでも白けるだけ。何たって『タクティクスオウガ 運命の輪』がこの前発売されましたからね!現在ぼくが所持しているゲーム機はDCと360なので、『TO』をプレイするにはPSPを購入しなくてはならないのだけど、値段を調べてみると最安値で買えば『TO』と合わせても二万円するかしないか程度。更に言うとPSPを型落ち中古に妥協すれば、もっと安くなる。今はゲームに時間を割く余裕が殆どなく、エロゲも溜まっているし、次から次にやらなければいけないものが出てくるから、買っても出来なさそうなので購入は控えたが、『TO』以上にPSPを買わせるゲームが今後出てこないだろうとも思ってます。『TO』絶対にやりたいので、来年中には買うかなあという感じ。エロゲーマー的性質としては何か良さ気な初回/予約特典が付いてくれば即買いだったんだけど、タロットカードとか誰得だ。サントラとかラフ集みたいなもっと魅力的なものをさァ……いつの間にか『TO』の話になってしまった。


●p190 神林長平「確かな自己、固定・変換・解放」
紹介文:
とある惑星で発掘された〈国家〉と呼ばれる人工物。そこに隠された真実とは?

 今回のSFマガジンで一番楽しみにしていた作品。やっぱり面白かった。グヘヘ。神林長平は日本人SF作家では一番好きです。ガッツリしたハードSFっぷりが楽しめる。

 作家詳細:
 【神林長平 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E6%9E%97%E9%95%B7%E5%B9%B3)】


●p212 林讓治「古の軛」
紹介文:
彼はなぜ、ストリンガーの死体を食べたのか!?

 タイトルが伝奇っぽくて良いですね。ありすはちの首木を、なんてフレーズも『Omegaの視界』にあることだし。内容は科学用語を使わないで異種知性体との交流を画く良質な短編だった。シリーズものだけど、これだけ読んでも全く問題なかったし、この作家の他の作品は読んでおきたいと思った。
 他の個体と思考内容のベースが著しく異なると、同期を取った際に軋轢が起きて死んでしまうストリンガー。まるで同期する容量が大きいと、同期先ハードが破損してしまうバグがあるバックアップソフトウェアのようです。この設定は作中で語られない部分も妄想させてくれる。彼らを作り出したイースがどうしてこのような制限機能を態々付加したかというと、おそらくは被造物たる彼らがその在り方に疑問を持った個体の思考が広まって半旗を翻したり、そうでなくともニート的な個体の思考が伝播して全体の仕事量が減ったり、とにかくコントロール不能な状態になることを抑える為だろう。状態を変化させないことを義務付けられた生命体だったわけだ。本気で考えると、その思考内容をどうやってパラメーター化して、生死判別する生化学反応になるのかとか謎だけど。新しい知識を得た後の個体のニューロン状態なんかがコンフリクト要因なら、新しい知識は母集団に全く入力されずに外界に適合できない生命体というわけだし。既存の記憶に新しいものを付け加える形ではなく、消去や上書きが多くなるとエラーが出ると考えるとなんとかなるだろうか。このへんは認知脳科学の知識がないと話が進められなさそう。
 それとグラースの獲得した認識は他の個体に感覚器を通して伝えられると、受信側個体は死んでしまうけれど、母集団の各々にストリンガーの感覚器を用いた伝達方法以外で、その認識に至る事実を伝えたら問題なくミームは伝播するんじゃねーのとか無粋なことを考えたり。
 亜門は、最終的にグラースがストリンガー母体に対して毒性を持ち、ストリンガーの認識からすると非ストリンガーたるものに変化した故に、彼は種族の軛から解放されたと言った。その種族であれば生きながらに知り得なかったことを知ったし、不変であるという造物主の命令をいつの間にか無効化していたわけだから。そしてわれわれ人間よりも自由だったと言っている。まあドーキンスあたりをご参照下さいという感じだけれど、人間も生存と繁殖の本能という命令が組み込まれた存在で、それに抗うことは難しい。特に極限状態などに於いてはそうだと思うのね。餓死しそうな人間が目の前に松屋の豚丼とかケンタッキーのチキンとかを置かれたら宗教上の理由とか関係なしにかっ食らうのではなかろうか(例:『そらのおとしものf』第七話アバンのアストレア)。生存せよという命令は理性によってのみ覆せる。ぼくは多分世間一般の人よりも生存したいという欲求が強い。なんたって、SFを読んでるからね。それとは別に、死という現象を体験することに対しても興味がある。それはいったいどのような感覚を伴う体験なのかは、死ぬ者にしかわからない。死というものに惹かれて種の継承を危うくするような表現形の遺伝を妨げる為に、自殺という選択肢が元来生命に宿っているならばともかく、そうでなければ自殺は本能の生存せよという命令を超えた知性に由来する行動であるのではなかろうか。亜門は一度、自らも死のうとしたが、衰弱死という難しい死に方を選んだせいで失敗してしまった。そこで自分もまた、軛を課せられていると感じた。だが彼はまた別の機会に死ぬことができる。軛は全ての生命に課せられているが、知性体であればそれを外すこともできるだろう。アストレアみたいにね。アストレア好きだなあ、オレ。
 まあ自己が自己である故に背負わされている軛や、それから解放される自由というレイヤーで自由/不自由ということを考えると、そもそも我々に意識があったり実体があったりする状態、つまり存在している段階で既に一定の不自由さに縛られてしまう筈だ。これは『エヴァンゲリオン』の最終回を思い出しますなあ。

 作家詳細:
 【林讓治とは - はてなキーワード (http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%D3%EC%AA%BC%A3)】


●p234 梶尾真治《怨讐星域》第十三話「減速の蹉跌」
紹介文:
宇宙船を減速する手段が失われ、ノアズ・アーク計画は瓦解しかかっていた。

 止まれなくなっちゃった宇宙船といえばポール・アンダースンの『タウ・ゼロ』。その中で不安を感じながら暮らす人々は少年少女たちではないけれど、『無限のリヴァイアス』のような空気を感じた。まあ内容はTwitterの140文字でなくとも要約できるくらいなので特に何か感じるところのある作品というわけではないし、むしろ突っ込みどころが多い。ご都合主義すぎやしないだろうか。《怨讐星域》っていうタイトルは格好いいなあとか思いました。

 作家詳細:
 【梶尾真治 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%B6%E5%B0%BE%E7%9C%9F%E6%B2%BB)】


●p254 新城カズマ《あたらしいもの》第2話「議論の余地はございましょうが」
紹介文:
夏の参議院選挙に立候補した田楽政樹候補。しかし、その街頭演説の背後では?

 Twitterやらセカイカメラやらベーシック・インカムやらのキーワードに加えて、文章自体も今時の流行ものという感じ。好きじゃないです。そっちが書きたいなら社会派小説でもどうぞ、という感じ。ライトノベル畑の作家らしく、紹介文では『15×24』という作品が紹介されているが、ぼくは集英社スーパーダッシュ文庫は核地雷級の駄作しか読んだことがないので信用ならんレーベルという印象しか。

 作家詳細:
 【新城カズマ - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%9F%8E%E3%82%AB%E3%82%BA%E3%83%9E)】


●p272 北野勇作「路面電車で行く王宮と温泉の旅一泊二日」
紹介文:
私は路面電車でこの街に帰ってきた。王宮と温泉で知られる懐かしいこの街に。

 “王は、王宮のあらゆる点に遍在しているのだ”。かっけぇ……巫山戯たタイトルとは裏腹にかなり気に入った。端的に場面や情報を切り取った文章もいいし、全体に漂う幻想的な雰囲気も素晴らしい。レイルソフトというか希テキストというか、イメージとしてはそんな感じ。他の著作も読んでみたい。

 作家詳細:
 【北野勇作 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E9%87%8E%E5%8B%87%E4%BD%9C)】


●p286 小林泰三「囚人の両刀論法」
紹介文:
古典的命題「囚人のジレンマ」の、究極的解決法とは?

 ヤスミンは短編集を三冊読んだけれど、未だに実力が図りかねる作家。内容がよく理解できないとか、そういうわかりにくさではない。読んだ直後は面白いと思うんだけれど、冷静に思い返すと特に好きなものはなかったりして、どのあたりに評価すればいいのか迷ってしまうということで。いや、今回の「囚人の両刀論法」は面白かったですよ。だからまた困惑させられているんだけれど。
 触発されてブルーバックスで刊行されているM・D・デービスの『ゲームの理論入門』を買ってしまった。〈囚人のジレンマ〉を拡張した問題は昨今話題のフリーミアムの問題にも関連するような気がしました。
 ところでイデアルとペンドラゴンの会話なんだけれど……
 
 「これは?」ペンドラゴンは尋ねた。
 「リングだ。この段階ではニーヴンのリングと言ってもいい」
 「リングワールドは力学的に不安定だ」
 
……って、こいつらSF者だろ。

 作家詳細:
 【小林泰三 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E6%B3%B0%E4%B8%89)】


●p312 田中啓文「カッパの王」
紹介文:
正彦がカッパを目撃した日から、周囲ではさまざまな超常現象が起きて――

 うわ、すげーバカSFだ。『時間衝突』なんかを「バカっぷりが面白い」と言われてもよくわからないけれど、これはワロス。かっぱ寿司関係ないだろwww……と、ついつい「ワロス」とか草を使ってしまう程に愉快。全然行く機会がないけれど、かっぱ寿司に行ったらこれを思い出してにやついてしまうだろう。色々と無茶があるけれど、たまにはこういうのも悪くない。

 作家詳細:
 【田中啓文 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E5%95%93%E6%96%87)】


●p331 SENSE OF REALITY - PSYCHOLOGY 香山リカ「突然“キレる”子どもたち」
 流石にこれには反駁しなくてはならない。我々人類は香山リカが(本気か建前かは兎も角として)夢想している程には平和的で余裕のある存在ではない。小学生の方が喧嘩をするし、大人と子供よりも子供同士でやり合う方が多いに決まっている。喧嘩をしてしまうのは幼児性から起因する万能感でも何でもない。交渉が決裂したからぶん殴るしか解決方法がなかっただけ。それは政治と同じでシステムの問題だ。それを心理の問題として「等身大の自分」とか、わけのわからない点に着地させる信仰のようなものこそが、ぼくに言わせれば害悪だ。心理の問題なら暴力行為を行うと頭痛が生まれる(ナンシー・クレスの《プロバビリティ》シリーズの〈共有現実〉みたいな)ようなロボトミーでも全人類に施せばよかろう。喧嘩してしまうのは先ず、片方がもう一方のルールを侵してしまうことからはじまる。そこで交渉が始まるが、どちらも譲れないラインがあるから手を上げる。我々が大人となって社会を形成し、個人なり組織なりで暴力行為に及ばないのは、ペナルティとリスクがあるからに過ぎない。多くの場合、子供には大したペナルティもないし、リスク計算もする必要がないし、監視する大人も大してよく見てないし、制裁も適当。そんな状況で個人が必要を感じた暴力が抑制できるとは思わない方が良い。非暴力の信仰は暴力で暴力を抑える現実よりも悲惨なものを呼び込みかねないからだ。


●p362 冲方丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
紹介文:
メトセラ第一世代を妊娠した我が嫁は、プラスチックの夢を見るように――

 子供が三百歳程度の寿命になるからって心配しすぎじゃねぇの?とは思うが、親というのはそういうものか。悪い意味じゃなくて寧ろ良い意味でね。この生まれてくる子供たちは三百歳の寿命があっても、それすら短いと思うようになるんだろうな。それが人間ってモンです。

 作家詳細:
 【冲方丁 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B2%E6%96%B9%E4%B8%81)】


●p374 小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
紹介文:
小国の王子アリスマは醜悪で身体も弱かったが、恐るべき算術の才があった。

 短編集『老ヴォールの惑星』がいまいち馴染めなかったので、あんまり積極的に読もうとは思わない作家。とは言えつまらないとかわからないとか、そういうのではなく優先順位が低いだけ。この人の作品は軽口というか、悪く言えば底が浅い。これは文系が書いた理系への憧れが込められているような内容だったな(小川一水が文系か理系かどうかは知らないし、実際に勉強すりゃ関係ないんだけれど、あくまで感覚としての話)。だから数理SFというジャンルには入らない。
 読みながら従者の正体はホエバトティホルの化身かとも思っていたがどうにも違う様子。明確には語られないけれど、“それの精”とあるからラッカーの「ピュタゴラスの平方根」(〈S-Fマガジン〉二〇〇二年七月号に収録)に出てくるアペイロンの生物のようなものなのだろう。

 作家詳細:
 【小川一水 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B7%9D%E4%B8%80%E6%B0%B4)】


●p394 円城塔「エデン逆行」
紹介文:
わたしには祖母が六人ある。わたしが祖母その人なのでそうなっている――。

 キィィ!わからん。日本語でOK状態であるが、これは楽しめなきゃ負けな気がしないでもないし。どなたか解説やらヒントをお願い致しますよ。最後に書かれている『シェルピンスキー=マズルキーウィチ辞典』たる万能辞書の説明はボルヘスの〈バベルの図書館〉っぽくもあり、且つそれをデジタル情報として収蔵されたもののようにも思えるが、だからと言って答が出るようなものでもない。しかしわからないながらも、つまらなさを感じさせないのは流石だ。これが短篇じゃなかったらちょっと怖いけれど。

 作家詳細:
 【円城塔 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E5%9F%8E%E5%A1%94)】


●p406 山本弘「地球から来た男」
紹介文:
その密航者は、いまどき抗老化処置も受けていない非近代的な男だった。

 山本弘は大評判の『アイの物語』が甚だしく受容できない内容だったので信頼感がない。むしろ「もう二度と読むことはないだろう」の域にある作家……ですが一応読んでおきますか。
 『アイの物語』に収録されていたどんなものよりもマシだった。古臭さは相変わらず。肉体改造やARに対するキッチュとも言えそうなパルプSF的な楽観描写が好みじゃない。基本的に「善いお話」を書く作家なんだろうし、今回もそうであった。それが悪いように作用して不快感しかなかった『アイの物語』と比べて、こちらは自然信仰が技術による個人の権利を抑制することに対するプロパガンダ小説的なもので、どちらかと言えば好ましい。自分で読んでも何とも思わないけれど。

 作家詳細:
 【山本弘 (作家) - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E5%BC%98_(%E4%BD%9C%E5%AE%B6))】


●p429 創刊50周年記念エッセイ 新井素子「SFマガジンと私」
 新井素子の本を読んだことはないが、この前何かが復刊したということで復刊ドットコムから紹介のメールが届いていた。このエッセイを読んでもともと高くなかった優先順位がさらに落ちた。ぼくも人のコトを言えないくらい読点を用いるが、この人の頻度は並じゃねえ。一ページのエッセイなのに読んでいて辛い。


●p430 森岡浩之「気まぐれな宇宙にて」
紹介文:
「ポジション」の発見は人類に新たな宇宙時代をもたらした。ただしちょっと歪な。

 うわ、面白いな森岡浩之!《星界》シリーズ読もう……
 ランダム性のあるワープゲートでギブスンの「辺境」を思い出しました。ワープゲート自体はよくあるアイデアだけれど、ランダム性があってどこに行くのかわからないし何が出てくるかもわからないっていう方が愉快。異種知性体の素っ気ない態度も面白い。お前らの未発達な文明には興味ないから、みたいな。でも中にはヒッチハイクさせてくれる種族もいたり。

 作家詳細:
 【森岡浩之 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E5%B2%A1%E6%B5%A9%E4%B9%8B)】


●p448 菅浩江「夢」
紹介文:
SFが好きな僕はよく言われる。「夢を見ろ」あるいは「夢ばかり見るな」と。

 ぼくもSFが好きだ。そして世界が早くSFになればいいと思う。
 内容はカイパーベルトで発見された二酸化炭素レーザーのパターンを見つけ出すサヴァンの話。そういえばぼくが通っていた小学校には障害者学級というものがあった。ぼくらの普通の学級とは授業内容も教室も違ったんだけれど、ごく稀に同じ部屋で給食を食べさせられたりしたんだが迷惑この上なかったことを覚えている。子供の頃は特にそう思うものだ。ぼくの年齢でも障害者を嫌う人はいるし、確かに涎をかけられたりするのは嫌だし、彼らの会話に付き合うのは難しいけれど、基本的に彼らが悪いわけではないからぼくは無駄な差別はしない。あるのは区別と同情だけだ。脳の物理的な機能障害でしかないとわかっているから不当に虐げることはしない。同情するなんてひどいと思われるかもしれないから一応書いておくけれど、そう言う人は同情という言葉の悪い側面に捕らえられているんだろうな。あくまでぼくは、ぼくら大勢とわかり合えない人は寂しいと思うし、不便も多いだろうという事実から同情しているだけ。例えば世界で一番普及している英語という言語を扱うことのできない人を英語話者が同情するのはある面で正しいとぼくは思っている。そういうこと。今回の話に登場するサヴァンたちも、その特異な能力を持ちつつも社会適応できた方が大抵の場合は幸せだろうし。

 作家詳細:
 【菅浩江 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%85%E6%B5%A9%E6%B1%9F)】


●p474 野尻抱介「コンビニエンスなピアピア動画」
紹介文:
プロジェクトは地方のコンビニから始まった――星雲賞受賞短篇の姉妹篇登場

 クモとニコ動とファミマSF。ニコ厨は楽しめるのか?ぼくはニコ動を見ないので何とも。2ch、ふたば、はてな、ニコ動……色々なところには色々な空気(ノリ)があるが、その中で馴染めてないものの一つがニコ動。そのノリを小説に多いに鏤められているわけじゃないけれど……わかるでしょう?
 ご都合主義進化した節足動物を宇宙に射出したら大抵思い通りに動いてくれないのがテンプレだ。それをどう使うかは別問題で。

 作家詳細:
 【野尻抱介 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E5%B0%BB%E6%8A%B1%E4%BB%8B)】


●p531 今月の執筆者紹介
 金子隆一はエッセイもおもしろかったけど、このコメントも面白いな―。以下引用

出張で十日ほど家を空けていた間に空き巣に入られた。賊はネコの出入口から浸入し、キャットフードを平らげた上、机の上にあったカンロ飴の包み紙を全部むいて食いやがった。くそっ、アライグマめ

以上。トリの野尻抱介を食ったぞ!

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