2010年12月10日金曜日

RococoWorks『ヴァニタスの羊』体験版(脱出編)

『ヴァニタスの羊』応援中!

 フラウエンちゃんのセル・オートマトン講座!クロとシロがそれっぽくない?ぽくないですね、ハイ。SF好きとしてはこういう複製、反復、停止のモデルがあって、尚かつその対象が意志を持っているとなると一本くらいは短編が出来ちゃいそうな気がしてならないんだけれど……話を本線へ乗せましょう。『ヴァニタスの羊』体験版について。
 当たり前なオハナシなんだけれども、やっぱりエロゲーというのはキャラクターが大事だということを再認識するに到る。アニメ、マンガ、ゲーム等々のサブカル系作品を総称してキャラクター・メディアと呼んでいた人がいて、かなり乱暴な呼び方ではあるものの一応正解の一つなんだろうな、などと思ったり。まあ正確にはメディアというよりもコンテンツだと思いますが。本作はけっこう真面目にファンタジーをやっていてエロゲーっぽくないのが良くない方向に作用した。エロゲーじゃなくていいと言われる作品と言えばやっぱり桜井光のスチパンシリーズがあるが、あれらではちゃんとキャラクターに魅力があって画も音楽もそれぞれがそれぞれに楽しませてくれる。確かに全年齢対象でもいいんだろうけれど、少なくともゲームである必要は感じる。『ヴァニタスの羊』の体験版ははっきり言ってキャラクターに魅力を感じない。それに面白い会話もなく、設定も魔術について色々語られるが特に目新しさはない。本編でフラウエンがデレたり隙を見せたりしたらニヤけることが出来そうだけれど、体験版はあまりにも堅い内容で、終始無表情で読み進めていた。特にアルマとエリファスの会話は戯曲や演劇のような一連のクリシェによるやり取りが多く、文字が順々に表示されてそれに声が重なるようなエロゲースタイルでやられると冗長に感じる。濡れ場でもこれが続けばある意味では面白いかもしれないと思ったけれど残念ながらカット。ここまで生真面目な作品だと、もういっそのことマーティンとかル=グウィンとか、そういう本家ファンタジー小説家(SF作家かファンタジー作家かと言う話はトモカク)の作品でも読もうかと思ってしまうくらい。だって世界観が~とか言っちゃったら、そういう小説を読む方が絶対に楽しいもん。
 そうして退屈を感じつつもクライマックスだけは胸に響くものがあった。クロードやテレーゼの年齢にあって慕っていた親との突然の別離ってのは辛いよなあ。彼ら自身と歳は離れていて既にそういう心境になるようなことはないけれど、悲しみの大きさというのはそれを感じた者が子供だからと言って軽く扱えるようなものでもない。声優さんの演技と音楽も相まった演出は逸品でした。そこで唐突にも体験版が終わっちゃったからびっくりしたけれど。あそこで終わって良かったのかどうかは……判断しかねる。一番良いところで終わったとも言える一方で、本編の彼らを見せてくれないと話にならないとも言える。
 この体験版は公式サイトの表示によると「体験版(脱出編)」とあるから次があったりするのかもしれない。帰還編とかね。今回は製品版で主に描かれる時間から九年遡って主人公達の幼少期を描いている。これこれこういう過去があるために現在の彼らはこういうことをしていますという話は重要だけれど、最初にそれを提示されるよりも物語の中で自然にテーブルに載せてくれたら良かったのに。これで発売日に突撃する人は体験版などやらなくとも突撃してたんじゃないだろうか。個人的な問題は上記までの感想に加え、『グリザイアの果実』と同日発売だと言うことです。ごめん、オレ『グリカジ』買うから……
 あと作中のちょっとしたところにケチを付けるようでアレなんだけれど、魔術を研究する者という意味で魔術師を名乗るエリファスとその弟子のクロードなら、アルマとテレーゼが不出の魔術の効果を受けた際にもっと試行錯誤があっても良かったんじゃないかと思う。もしかしたら既に敵に察知されている恐れがあることからエリファスが警戒して最小限のテストに留めたのかもしれないけれど、アルマを伴わずにテレーゼだけで門に近づいたらどうなるかとか、方角や時間や被験者の意識状態等の要素を含めた各近づき方なんかを考えずに、不出の魔術の使い手を捜して〈石のパン〉の影響下に入れ不出の魔術の無効化を優先させるという結論を出すのは傍から見ていると短絡的なのね。どんな作品でもそういう手落ちっていうのはあるんだけれど、何らかのフォローはして欲しいと思ってしまう。

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