あまり期待していなかったのにほぼ確実に購入を決定させられてしまうくらいには面白かったです。何だか気にはなるけれど実際あんまり大したことないんだろーなー、と思わせるような雰囲気が漂ってるオフィシャルサイトだと思わんかね。キャラクター紹介の際の変な文体に、事前情報ほぼなしのストーリー紹介とPV映像。それでいて意味不明瞭なキャッチフレーズ、“世界刃向かう、6つの果実。”……素晴らしき地雷臭かな。しかし、体験版後には、十周年作品だし~とか、予約特典欲しいし~とかで予約の上に新品での購入まで検討するに至ってしまったではないか。くそう。良い意味で、くそう。
事前情報が著しく不足しているので、体験版なり製品版なりで一度作品に触れないと、その作品のカラーがわからないというのは、なかなか思い切ったことをする。そしてここに来て渡辺明夫の本編投入。しかも“『化物語』キャラクターデザイン/総作画監督”という肩書きまで使って。こっちでやる時はその名義使わないんじゃなかったっけ。ファンダムでは広く名を知られ、支持されているこのメーターをエロゲの原画として用いる作品は『ぽぽたん』以来久しくなかった。フロントウイングの本気を垣間見たのであった。『ジブリール4』との並行開発という大義名分で、空中幼s(いや、もう止めとくわ
タイトルの果実という単語は惑星(地球)や知性(脳)をイメージさせる。キャッチフレーズにある通り、主要登場人物たちが果実として指されているものなんだろう。また、公式サイトにある“ The name of the gray tree is Grisaia. They are fruits that ripened on the branch. ”という文章からは単純に舞台がグリザイアとも読めなくはないが、この文章を補完する文章がアニメイトの商品紹介ページ【グリザイアの果実| animate ONLINE SHOP(アニメイトオンラインショップ) (http://www.animate-onlineshop.jp/special/grisaia/pc/)】にあることも注意かな。そこには以下のように書かれている。
『グリザイアの果実』
(The World Tree of Grisaia.)
The name of the gray tree is [Grisaia].
They are fruits that ripened on the branch.
But a flower is not bloom.
(その灰色の世界樹の名は“グリザイア”──彼女達は、その枝に実った“果実”である──しかし、花は咲かない)
以上。逆にわかんなくなった。世界樹に実った果実なら、その世界の、っていうか人間原理的宇宙の主要構成であると解釈できるんだけれど、花が咲かないというのはどういうことか。
キャッチフレーズでは世界に刃向かう、という言葉に説明が加えられていないから、プレイ前は色々と妄想を逞しくすることができたし、プレイしてもそれに関して具体的に情報を与えられないので、その妄想を棄却しないでおける。考えついたところでは、主人公たちは画期的な脳外科手術(要するにロボトミー)を受けていたり、世界的にも稀有な特有の脳波パタンを持つ人物(年齢が近いのは、誕生する際に何らかの外的要素に影響を受けた為。天音に関しては後述の「エンジェリック・ハゥル」によって後天的なものだと予想)だったりする。そこで《ブギーポップ》みたいな「世界」の一般意志に対して対抗要素として管理されているとか、科学的ブレイクスルーを起こそうとする実験設備の偽装が学園であるとかそういうの。ちょっと有り得そうにないかもしれないながらも、あくまでも着眼点の一つとして報告してみたんだけれど、体験版をプレイした他の方はどうか、というプロポーズなのだけれど(by一姫)。
総括的に内容を整理して、各キャラクターや物語の全体像の予想を書き出すのはめんどいんで下記を参照、というかそんなに予想できる程の情報でもないので、どちらかというと整理も何もないという感じ。ただ今回の体験版は、普段の会話でキャラクターたちに愛着を感じられたし、シリアスな面を少し出されたときには先が気になって仕方がないという大変期待できる内容だった。逆に期待が高まりすぎて怖い。この期待に応えられるようなゲームは最近だと桜井光のスチパンシリーズと閂夜明の『Omegaの視界』くらいだが、体験版時点での方向性の違いからまったく予想できず、且つ桜井光と閂夜明は大きく信頼している一方で本作のライターは実力がよくわかんね、という状況なので懸念もあり。買うには買うが、これが面白くなかったらフロントウイング作品からは暫く離れることになるかも。不安は期待の裏返し、ということで発売を心待ちにしつつ応援したいと思います。
以下、体験版で見ていった場面順に、その際に書いたメモ兼コメント。色々妄想したことについてのメモもあるけれど、体験版は展開や設定を妄想してナンボ。そして妄想させてナンボ。その意味でもよく出来た体験版だ。
●「オープニング」
各キャラの顔見せは随分簡単に済ませてしまっている。最近のゲームにしては急ぎ足かも。或いはこれすらも抜抄版か。蒔奈の言語野云々はジョークか本気かはわからない。みちるの声はイメージとは違ったが後々この声しかないと思うまでに至った。声優はまったく詳しくないながら、『ひだまりスケッチ』の宮子もこんな感じの声だったなあ、とか思って調べてみたら(以下略……四十の芸名って、それは純粋に憧れる)。この「オープニング」の段階で一番気になるのは学園および主人公の背景。ちょっとだけ『フルメタ』っぽい。どう考えても軍務だか何だかで戦闘に馴染んでいた人間。で、後になればなるほど『フルメタ』っぽい。
●天音エピソード「サプライズ・パーティー」
あまりにも早い乳首解放。まあおっぱい丸出しで喜ぶとか、ぼくはあんまりわからないからどうでも宜しい。見えそうで見えないのが好きだ。アニメとかでも乳首が出るとご褒美的な反応をする輩が多いけれども、どうにもわからん。付け加えて、カタルシスではないけれども、愛着や妄想を積み重ねてきた対象でもないのに秘めたる部分を出されても美味しくないというか。天音の乳首ディスりまくりでごめん。
●由美子エピソード「お前、ビビリやん」
みちる様の「ウオッホウゥゥゥッ」。どんな喘ぎだ。彼女は「オープニング」でも幸に物理フォーマットで云々言っていたし、ここでも「洗脳してよ!」とか言うけれど、何かを象徴しているのかもしれない。6月13日分のエピソードということで蒔奈とは「オープニング」に比してかなり友好な関係になっていた。お兄ちゃんとか呼ばれてるのに、その過程を知らないとありがたみがない。エピローグの文章は二人の情景が立ち絵からでも想像できるような上手さがあった。
●みちるエピソード「猫ニャー登場」
薄々気付いていたけれどみちるは完全に弄られキャラで大変愉快。すごく元気で精一杯で、見ていて気持ちが良い。彼女の優しさや、他のキャラクターと比べた場合の普通さも感じられるエピソード。「猫ニャーがかわいそう」って、きちんと言えるのは彼女の善性の顕れだ。さらにみちるは幸や蒔奈のように頭の回転が速かったり博識だったりするという意味とは別に、ころころと話が転がるのは軽妙でダンスのようです。でもダンスは「みちるの儀式」で本当に披露してくれる。
●蒔奈エピソード「豊かな食生活」
6月20日分エピソード。ここでも蒔奈と仲良くなる段階は既に過去のものとなっている。製品版でお楽しみくださいってこと。蒔奈はモノホンのフォトリーダー。主人公以外で、このゲームのキャラの特異性が初めて垣間見える内容。尤もこの程度で舞台である特異な施設に入れられることはないだろうから、特異性のごく一部分なんだろう。ていうか、ヴァギナとか言っちゃうんだ。そいつはヴァッギーナだね!……えー、話は変わりまして、ザリガニを青くするためにカロチンを含まない食事を与えているらしい。検索してみたんだけれどこんな色になるのは初めて知りました。まあぼくはザリガニに関しては飼育よりも食ってみたいと思っているのよさ。ヴァッギーナ!
●幸エピソード「振り向けば幸がいる」
6月29日分エピソード。制服ガーターはエロい。掴みにくいキャラクター。
●天音エピソード「ランニング・カンデス」
“一見すれば、どこにでも居る近所のエッチなお姉さんを気取り、その実、まるで呼吸するように、当たり前に人を殺す殺人装置…。”ひでぇw
●由美子エピソード「あなたのご趣味は」
蒔奈はシモネタ好きなんだね。ヴァギナとかオナニーとか。執拗なセクハラを受けるみちる。
●みちるエピソード「みちるの儀式」
カクタス・ダンス!!みちるエピソードの筈なのにうめき声しか発せていない彼女。哀れ!あまりにも、哀れ!ライターはSFに関心がないのだろうか。宇宙人の話はもっと盛り上げなきゃ。
●蒔奈エピソード「犬と鉛筆とありがとう」
この程度の英語コントなど、「No, I am my cottage.」(『百花繚乱サムライガールズ』第七話より)を体験した我々には何ということはない。蒔奈は本当に脳を弄られてるっぽいんだけれど。特に幸が言うとシャレにならない。言語系問題に関しては幸のエピソードでも取り上げられるけれど、蒔奈を見ると『スノウ・クラッシュ』あたりを思い出すなあ。『バベル17』は未読。
●幸エピソード「まむしごはん」
幸はどんどん忍者っぽくなっていく。このエピソードの時点で雄二やJ.B.の同業者かと疑い始める。蒔奈のコントには声優の凄さを改めて思い知らされる。
●J.B.エピソード「謎の金髪登場」
とりあえず形式上は雄二が希望し、J.B.も手回しをして、舞台である学園に学生として入り込むことになったということらしいけれど、それは果たしてどこまでが本当なのか。個人的には記憶操作や意識誘導も疑っているので。
●由美子エピソード「CV:榊由美子」
由美子よりも蒔奈の唐突なボケに対する幸の神対応と、その二人による執拗なみちる弄りが光る。
●みちるエピソード「いつもと違うみちる」
みちる優遇エピソード。打ち抜かれたのは、吸血鬼でもみちるの心臓でもなく、プレイヤーの購入意志……この時点で購入がほぼ決まった。みちるは自発的に使えるアビリティを持ってるわけじゃなくて主観としてはフツーの少女だけれど、心臓に何か仕掛けがありそう。『ひとりっ子』の〈クァスプ〉や『Omegaの視界』の〈雫〉みたいな全自動機能とか。まあ、この六人が全員特異な因子ではなく、中にダミーとして配備された人物がいるとしても、みちるは逆にアレすぎてなさそうだし。目下怪しいのは天音と幸か。特に幸はイレギュラーに対応する用途として配備されたSPみたいな存在に見えるし。
このエピソードで雄二を通して語られる死については、ぼくの考えと一致している。前もどこかに書いたかもしれないけれど、連続性の断絶だから、入眠してから起きないのと同じだと思っている。だから各個人は毎日のように死と似た現象を体験しているとも。苦痛や未知の感覚は一時的なものだし、消滅してしまうという意識的恐怖はそこまで感じおらず、死によって行動不能になって未来が見られなくなるのを恐れているんだよね。。というわけで、ぼくはみちる様に『ベガーズ・イン・スペイン』を推す。
●蒔奈エピソード「一子相伝、風見流スーパー護身術」
ついにみちるへの弄りは暴力にまで発展する……
●幸エピソード「誤植プレイ+」
幸の「ごっつぁんです」には「まむしごはん」の時ほどではないにせよ、声優の凄味を感じた。褒められて喜ぶ下りで、昔雄二が戦場で結果的に命を救った少女が幸とか、そういうオチを考えてしまう。それで後を追うように幸も兵士になったとか。ううん、幸戦闘要員説から抜け出せない。でも過去に雄二に助けられたのは千鶴っぽいんだよね。
●天音エッチシーン抜粋「青い果実」
果たして体験版に入れる必要があったのか。フロントウイングのエッチシーンに関してはシナリオ/キャラゲーの「そらうた」が予想以上にエロかったのに反して、抜きゲーの「ジブリール」が予想よりもエロくなかったので期待していいのか、そうでないのかわかんないのよさ。
●天音過去編エピソード「エンジェリック・ハゥル」
一姫かわいいよ一姫。天音の過去のシーンのように見えるけれど、このシーンの天音とそれ以外の我々が見た天音に連続性があるかは不明ってところがSF者としては主張したいところであります。でも、これは結構マジな話、怪しいところではなかろうか。「豊かな食生活」で蒔奈のフォトリーディング能力について雄二は自分の姉にもその能力があったことを明らかにしているし、同じ風見という姓も、この過去時間に於ける天音が本編時間で記憶に連続性があれば強く意識している筈。このような遭難を経験した際に深く交流を経た相手のことならば、深く記憶に刻まれるだろう。それでも「豊かな食生活」の会話で特筆したリアクションがなかったということは、偽装か、記憶にないか、そのどちらかしかあり得ない。体験版「エンジェリック・ハゥル」後に起こったこと(人食いっぽいよね。みんな同じこと想像するけど、ライターさんには裏をかいて頂きたい!関連:【『グリザイアの果実』エンジェリックハゥルでの塩の使い道を予想してみた あしたがみえない (http://asitagamienai.blog118.fc2.com/blog-entry-804.html)】)の心理的圧迫によって関連する記憶を想起できないようになっている、という精神疾患的なものだと考えるのが普通だけれど……これもありがち。「オープニング」であった「質問に対して質問で返すのは~」の下りや、「豊かな食生活」の「天才になったところで、得られるのは賞賛じゃなくて敵意と嫉妬~」の下りもまた無視できないところだ。どこで誰に言われたのかを天音自身は記憶していない様子。ヒントはもう一つあって、それは「エンジェリック・ハゥル」以外の天音は眼鏡を掛けていないという事実。コンタクトレンズ説はシャワーや風呂のシーンでそういった描写がなかったので、個人的には否定したいところ。そこで思いついたのは神経移植でした。天音に一姫の視神経等の神経細胞を移植した結果、それが神経突起を伸ばして既存のニューラルネットワークと結合したので、一姫の表現形の性質が天音に伝わって、それが視力を良くしたということ以外にも、姉という性質も伝わることになったとか。予想していなかった表現形の現出は、まあイノシトール三リン酸の制御を完全にできそうな未来の話でもないし、手術にあたっての副作用によるものとか。もっとSFっぽければ一姫の脳のデータを天音の脳内に共生させて前意識上で一姫が存在するってネタも思い浮かぶところだけれど本作の設定ではそこまでは無理。で、その手術なんだけれど、ここから蒔奈が過去に病院に長いこと居たことや、みちるの心臓機能不全疑惑などを思い出す。やっぱり全員何らかの施術を施された人間だったりするのかもしれない。実家が飯屋という天音の設定はこの過去編でも殆ど真実だと確認できるが、むしろ辻褄が合う部分と合わない部分が混在している不気味さを残す。そして読み手はそこに惹かれる。
天音について以外では、なぜ一姫がほぼ確実に助かることを核心しているのかがわからないところ。全員が生き残るとも、絶対に大丈夫とも言わないが、少なくとも数人は生き残れるだろうと言っている。そうなると人食いというアイデアは一姫の生き残るという核心とあまり一致を見られない。そこで思いつくことは一姫が意図的にこの状況を作り出したということか。冗談だと笑っていたけれど、この状況になることを予想していたと言ってもいたし。あるいは外部の組織からの手引きなのかもしれない。彼女を誘拐したり、殺害しようとしたりするならば行動が遅すぎるからそれはないとして、上層部が仕組んだテストだとも。それがわかっているから一姫としては適当な点数でクリアするために役を演じているなどの可能性も考えられる。
さらにミスリードの可能性も多いにあり、プレイヤーはゲームの本時間軸で雄二の姉らしき人物〈師匠〉が既に死亡していることも知っているから、同じ姓を持ち特徴も一致する一姫を姉だと思い込んでいる。いや、一姫が姉であることは間違いないんだろうけれど、ぼくらが読み違えているのは一姫がここで死ぬということではなかろうか。さらに個人的には一姫が〈師匠〉だとも思っていた。しかし「エンジェリック・ハゥル」以前(ゲーム内世界の時間的には以後だが)の本編エピソード群で語られたことを思い返してみると、雄二の〈師匠〉は一姫とは別人物だと考えられる。師匠は長身で(「オープニング」)、J.B.曰く麻子という名前(「謎の金髪登場」)であり、しかも色々なエピソードで語られる〈師匠〉の適当さと一姫の繊細さは一致し難い。J.B.と〈師匠〉は友人同士で、〈師匠〉の死後にJ.B.が雄二を引き取ったとある。だから主人公の姉が死んだという確定情報はまったくないわけね。例えばフォトリーディングの能力を語る際などに「俺の姉にも同じ能力があった」と過去形で語られるので、我々は一姫が死亡したと思い込んでいるというわけ。しかも死ぬのはこの「エンジェリック・ハゥル」に於いてであると誘導されてしまっている。むしろぼくなどは、敵方にまわっているとかの可能性も捨てきれないとは思うのだけれど。
あとはエロゲーで常々不満に感じることがあって、どうせ十八才以上の男性が対象のゲームなんだからブレインストーミングの説明とかはサラッと流してくれればいいのに。せめてこんな感じに……
一姫「マイクロブラックホールが激突したって可能性はまずないでしょうし――」
天音「例え物質密度がホログラフィック限界に達してマイクロブラックホールが生成されても、ホーキング放射ですぐに消滅しちゃうんじゃないの?」
一姫「そうよ。けれどもブラックホールが持つ情報密度をホーキング放射でブラックホール外に発生させれば、エアーバーストと同等かそれ以上の熱エネルギー放出になるんじゃないかしら」
とかね。まあこの時点の一姫と天音が中学一年生だと考えるとやや無理があるし、一姫が色々と説明しないと天音が何もわからないのも仕方がないか。まあ何にせよ、ここで公式サイトで紹介のない魅力的なキャラクターが登場したことは嬉しいハプニングだった。一姫がこの後どういった状況になったのかをどうしても知りたくなる。そんな終わり方だった。
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