2010年11月21日日曜日

ホログラフィック宇宙について

 宇宙ホログラム説というものをネットで聞いた。なんじゃそりゃということで調べました。感覚的にはM理論に於いてカラビ-ヤウ多様体がそれぞれ互換性を持っているのと似ている。特定時空Aの境界面とA内部の関係は互換性があり、その関係が適用できる宇宙モデル(反ド・ジッター時空とか)なら時空内部を観測/計算しても法則が証明し難い物理理論が、境界面でその物理理論と関連する法則を調べることによって計算の不備が補える。
 以下はメモ兼簡単な解説。


●情報収集の発端
【「宇宙ホログラム説」、超高精度の時計で検証へ | WIRED VISION (http://wiredvision.jp/news/201011/2010110423.html)】の宇宙ホログラム説。
 なるほど、わからん。しかしわからんものは調べるのがSF読者のメンタリティ。ということでググる。すると〈日経サイエンス〉誌の記事が目に付いた。その詳細は後述。


●上の記事のノイズについて
【「この宇宙はひとつの巨大なホログラムである」~GEO600の騒音の謎に大胆仮説 : ギズモード・ジャパン (http://www.gizmodo.jp/2009/02/geo600.html)】も参照。
 なるほど、やはりわからん。だが所詮は憶測と知識不足で成り立つブログ〈GIZMODO〉。たぶんライターもわかってないから放置する。というか最近〈ギズモ〉がホットエントリになりすぎじゃなかろうか。クソエントリに集りおってからに、と思わずにはいられないが、そこが出発点となって発展するならそれも良しとするか。


●前提
 文系とか理系とか以前の低学歴なぼくでも読めたけど、一応、前提知識について。

 計算する宇宙モデル(【デジタル物理学 - Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6)】)がとりあえず重要な概念。物理と情報の結びつきがわからんって人はセス・ロイドの『宇宙をプログラムする宇宙』を勧める。


 それから参考資料としてホーキングの著書が載っていたけど、ホーキングよりはブライアン・グリーンの本が良いと思う。ブライアン・グリーンはこういう話題が出る度に勧めているような気がする。

 
 色々調べていて読んでおきたいと思った本は以下の二冊




●〈日経サイエンス〉二〇〇三年十一月号
〈日経サイエンス〉誌の記事【ホログラフィック宇宙:日経サイエンス (http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0311/hologram.html)】。
 図書館で借りて読んだ。正直かなり端折った記事だが、WIREDの宇宙ホログラム説というもののイメージは掴めた。

一般化第二法則(GSL ; generalized second law):
 物質がブラックホールに入っちゃって、そのエントロピーも中に入ってなくなっちゃうように思えるけれど、エントロピー分もちゃんとブラックホールが増大する。ブラックホールは地平面の面積に比例したエントロピーを持つから、ブラックホールがでかくなればブラックホール外とブラックホール内のエントロピーの総和は減少しない。ついでに言うとホーキング放射でブラックホールが質量を失って地平面の面積が減少しても、物質がブラックホールに入るときとは逆の向きに一般化第二法則が働くらしい。

ホログラフィック限界と普遍エントロピー限界という孤立系のエントロピーの限度について(p59囲み参照)――

ホログラフィック限界(universal entropy bound):
 レオナルド・サスカインドが考案。物質やエネルギーを含む特定の空間領域――面積A――がブラックホール化するとする。そうしたらそのブラックホールの表面積は元の空間領域の表面積よりも小さい。さらにブラックホールのエントロピーは、そのブラックホールの表面積に比例しA/4となる。ここでブラックホール化する前の面積Aのことを考えると、それが持つエントロピーもA/4以下になっていたと考えられる。よって特定の空間領域が含む最大エントロピーはその表面積に依存する。
サスカインドの記事は【日経サイエンス 日経サイエンス 1997年7月号 (http://www.nikkei-science.com/item.php?did=50707)】

普遍エントロピー限界(holographic bound):
 特定の空間領域がブラックホールに飲み込まれると、ブラックホールは特定の空間領域の質量に比した分だけ表面積が大きくなるという事実は上記と同じだけれど、情報密度の求め方の違い。これは計算を質量に依存するから(?)、ホログラフィック限界よりも普通、ブラックホールの増加分が小さい。ただしホログラフィック限界みたいに、その空間領域がブラックホール化する直前の密度があったと考えれば、情報限界量はホログラフィック限界と一致する。

 どっちにしろ、特定領域内の体積がどんどん増えて、その熱力学的エイントロピーが表面積から算出される情報エントロピーを超える前にブラックホール化してしまうから、エントロピーの限界値はやっぱり表面積依存ということ。
 これらの計算法によって表された自由度の限界を「レベルX」と呼ぶ。これは差し渡し1センチメートルの装置では、原理的な限界値で10の66乗ビットまで情報の保持が可能になる。

 上記の事柄から、境界面内部の情報は境界面に全て記述可能だ。だから我々の四次元宇宙の物理法則も、時空の三次元境界面のどこかで機能する物理法則と等価であると考えられないだろうかということで研究が進む。でも四次元宇宙と三次元宇宙で等価に機能する法則はまだわかってないし、境界面としてどんな面を使えばいいのかもわからないので、とりあえずは単純化モデルの研究が必要になるとのこと。
そこで出てくるのが反ド・ジッター時空。ド・ジッター時空は一定の速度で膨張し、高度な対称性を備えている空っぽな宇宙モデル。このモデルはアインシュタイン方程式の宇宙項に反発力を用いていて、この反発力を引力に変えると解は反ド・ジッター時空になる。ド・ジッター時空と違って反ド・ジッター時空は無限遠に境界面がある。この反ド・ジッター時空で働く超弦理論は境界面で成立する場の量子論と等価となる。ここでやっとホログラフィック理論がどうして重要かということが明らかになった。境界面の記述を読み取れれば、内部宇宙の法則に翻訳できるということだ。今ではここから発展して、様々なモデルに於いてホログラフィック理論による境界面と内部の対応関係が知られているという。
 とは言え、我々の宇宙は境界面のある反ド・ジッター時空にはならず、物質と放射が均一だと単純化してもフリードマン・ロボートソン・ウォーカー宇宙というモデルに近くなる。こうするとホログラフィック理論による関係の対称性が使えなくなってしまう。

 この後、ブーソー限界という上記のホログラフィック限界の求め方を修正したものが出てきた。他にも変形版のエントロピー限界が提案されつつある。ホログラフィック理論は各所に浸透し、計算が平易な究極理論を目指しているというところで記事は終わり。
 境界面に情報が記述されていて変換可能だなんてイメージし難い……というよりもイメージすると逆にややこしくなるけれど、理論物理学の考え方として、より計算し易い式から計算し難い式の解が出せるなら、そのモデルは意味があるよねというオハナシだ。最も、イメージし難いからそれが実在的には関係なく、理論上の話に収まるという単純なことではなく、我々の認識では区別が付かないという話なのがSFちっくで熱くさせてくれる部分だ。

 ここから、上記WIREDの記事はレベルXを見つけようとしている内容だということがわかる。それによって我々の宇宙のエントロピー限界が逆算できるということかな……?


記事の末尾に載ってた参考資料:


 上記サスカインドの記事も要参考。


●備考
【【仮説ヤバイ】 この宇宙はホログラムでした 俺もおまえらも本当は2次元の情報に過ぎないらしい…… (http://www.unkar.org/read/namidame.2ch.net/poverty/1234343753)】の51参照。スレタイは誤解しているかと。


●追加情報
【重力は幻なのか? ホログラフィック理論が語る宇宙 (http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0602/gravity.html)】
 〈日経サイエンス〉2006年2月号の記事。最寄りの図書館で取り寄せて貰っているので今度読む。

マイケル・タルボット『投影された宇宙―ホログラフィック・ユニヴァースへの招待』は書名はそれっぽいけれど、今回の話とは関係なさそうだが、一応図書館でチェック。

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