2010年3月9日火曜日
チャールズ・ストロス『ジンギュラリティ・スカイ』(金子浩訳)
去年から話題になっていて、『SFが読みたい!〈2010年度版〉』(wikipedia)で発表された海外篇でも二位になっていた『アッチェレランド』の作者の邦訳第一弾。イギリス作家のSFらしく、ギミックや台詞や思想もは面白いのだけれど、話の大筋はあまり興味が持てなかった。ハードSFで、これが所謂ニュー・スペース・オペラというものらしい。イマイチその、ニュー・スペオペというのがどういうものなのかわからなかったりする。つまり「そんなにスペオペか?」という意味で。物語は遠未来で宇宙戦艦も出てくるわけなんだけど、宇宙戦艦の光円錐航行は軍艦の運用がかなりコッテリ描写されているので分量は多いのだが(ついでに読みにくい)、結局のところその軍艦の運用は物語上重要でないというのがかなり初期の段階から明らかになっているので、あまりスペオペっぽいという感じではない。個人的には遠未来のスペオペというと、古い本だけどクラークの『都市と星』が一番に思い浮かぶかな。あそこまで、バリバリ宇宙モノっぷりを詰め込んで他の要素の排除をしてしまえばスペオペと言われても抵抗はなかったと思う。とはいえ、どちらかと言うと宇宙規模の話になっているので、スペオペにあらずというのは無理があるか。現代のハードSFになると情報系、物理系、生物系が色々な混じり合いをするので、昔の本よりも区分けが難しくなっているということもあるのだろう。だからちょい前に読んだ『フェアリイ・ランド』がサイバーものとナノテクものが混じっていたのは必然ということなのかもしれない。
それにしてもなんでこうぼくが読むイギリスSFだと、『ニューロマンサー』的な人物が多いかな。こういうのは面白いからいいんだけどね。本作も登場人物のアーキタイプと配置が似ている。主人公は技術者系のスパイで、相方になる女性も別組織のスパイで実戦担当。しかし半ば合法的に動くので、イリーガルさは感じない。あくまでちゃんとした上司(みたいな存在)がいて、そのコマにすぎなかったりする。人間以外にもヘンな奴等が多くて良い。まずフェスティヴァルという空から携帯電話を降らせて「私達の知らない話をしてください」って言う奴等もやることがインパクトあるし、エシャトン(E、ビッグE)という人類を半ば強制的にシンギュラリティへと追いやった存在も万能ではないので、他の知性体に「お前らオレらの過去光円錐にイタズラすんなよ」って言ってちゃんと監視も怠らない。フェスティヴァルに寄生(共生)するクリティクスなんかも人類を見て「内的ディスコースがインターテクスチュアリティの欠如で機能していない」とか言ってしまう。物語以上にこういう各要素の方が読んでいて楽しかったりする……というかぶっちゃけると物語つまんね!『ニュロマ』の方が面白っ!尤も、ここまで評価されている作家というのは気になるので続編の『アイアン・サンライズ』もク・リトル・リトルな『残虐行為記録保管所』も読もうとは思っているのだが。
以下、読書中のメモ。ものすごくネタバレ。
■人間の登場人物
[地球人]
マーティン:主人公。エシャトンが新共和国に遣わしたスパイ。技術者だけど、その点に関しては興味深い描写はあまりない。冒頭で周囲を探るために、アイマスク型モニタを見ながら昆虫型ロボットを使うところはスパイっぽくて格好良かった
レイチェル・マンスール:国連の査察官を隠れ蓑にした国連情報部のスパイ。インプラント強化による戦闘速度状態の描写はナイス。閉鎖的な新共和国を内部から変化させるために、ブーリャにコルヌコピア・マシンを渡しにやってきたが、フェスティヴァルの来訪でコルヌコピア・マシンは殖民惑星に溢れかえっていた。無駄足乙
[新共和国人]
ミルスキー:〈ロード・ヴァネク〉艦長
イリヤ・ムラメッツ:同副長
ザウアー:同保安少尉
クルツ:年老いた提督
ロバート・バウアー准将:提督の従卒
ヴァシリー・ミューラー:当制省の新人代務官。つまり秘密警察で、いわゆるバシリスク。
フェリックス・ポリトフスキー:フェスティヴァルが訪れた殖民惑星の公爵
ブーリャ・ルーベンシュタイン:殖民惑星の反体制派の人間で、地下運動の大立者。実はヴァシリーの父親だけど、割とどうでもいい設定
[セプタゴン]
アリアドネ・エルドリッヒ:艦隊攻撃宙艦〈ネオン・ロータス〉艦載機器調整官
マルクス・ビスマルク:同阻止艦長
チュー・メリンダ:同公共情報機構との連絡を担当する乗員
■人間以外
ファースト:クリティック。観察する女
セヴンス:クリティック。戦略のシスター。批評する女。実際に殖民惑星に降りてブーリャと行動を共にする
エシャトン:E/ビッグE
フェスティヴァル:自動的に恒星間情報網を復元させる役割を持つものだと推定される。新共和国が情報の流れを停止させている、プレ・シンギュラリティ状態なので、半ば強制的にシンギュラリティを起こす
■メモ
CVD(因果律兵器)
生物群系(バイオーム)
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