久しぶりに物語が素敵すぎて現実が辛いという心境にされた。相変わらずとても面白い。相変わらずと言っても、今まで主人公がメインで面倒見てきた妹は前巻の最後に一端のプロ・ランナーになるために渡米してしまったので、今回は妹の友人であり、主人公の後輩の黒猫の面倒を見る話。ちなみに黒猫というのはHNで、本名は五巻になってやっと判明。五更瑠璃という。主人公の学校へ入学しても、今までと変わらず揺るぎない邪気眼キャラであるので、当然友人はできない。「人間ごときが」とか言ってたら、見た目が美少女でも普通の人はドン引きなのは仕方ない。しかしそこは面倒見の良い主人公。黒猫の良いトコロもちゃんと知っているから放っておけない。高等ゲーマーの彼女ならばゲーム部でやっていけるだろうと画策し、なんとか部の仲間と噛み合うようにさせてあげる、という流れ。妹と主人公は高校生と中学生で学校が別だったので、物語の舞台が学校になることは少なかったのだが、今回は殆どの場面が学校で語られる。一見部活モノっぽくもあるが、昨今のコミュニケーションを見せ、物語性の低いものよりはしっかりしたストーリイ……に見せかけて、やっぱり物語はどうでもよくてコミュニケーションというかイチャイチャっぷりが目に付くエロゲ的ラノベ(褒めてる)。
新しい登場人物が幾人かいたけれど、割とどうでもいい。個人的にはまだ彼や彼女らは黒猫の友人を作るというアクションのための目標物でしかなかった。ゲーム部部長は時には頼りになる人物で、黒猫とゲーム作り対決の相手としてライバル/友人関係になる赤城(妹)は主人公含む部員のあれやこれを妄想してしまう腐女子という設定で、個々のキャラクターとしてはそれなりに面白いと思うのだが、黒猫が可愛すぎて全部吹き飛んだ。黒猫が可愛すぎて全部吹き飛んだ。大事なことなので二回書いた。便所飯を噂される可哀相かつ痛い邪気眼キャラなのに、というよりもそんなキャラだからこそ、読者と主人公と、あと主人公にくっついてきたりする幼なじみの庇護欲を誘う。もちろん庇護欲という感覚は、対象がその感覚の構造を知れば、一般的な倫理感(しかし、そんなものは糞くらえだ)では迎合しかねるものではある。人が可愛らしいという印象を画くとき、対象は観測側からしたら無力に近い状態でないといけない。保護者面が対象に向かってできるときに庇護欲求は生まれる。萌えポルノのみならず、正義や善意や好意や愛の裏側に常に潜むエゴの空転を、はたして作品ではどう乗り越えるか。今回も『俺妹』は「可愛いからどうでもいいっしょ?」と問題をぶったぎる。Yes!We can!(訳:はい、どうでもいいです!)一応、最終的には黒猫なりの強さを見せてくれるわけだが……そこもどうでもいいところだろう。ただ主人公のベッドの上で枕を抱いたり、うつぶせになる黒猫のイメージを画くだけで読者は幸せになれる。誘ってるって、コレ!選択肢出てるって、兄貴!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん、んはぁっ!黒猫たんの真っ白なフトモモをクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! (以下略)
妹の方は、黒猫が可愛すぎて主人公と読者が本書タイトルすら完全に忘れたころに、アメリカからメールを送ってくる。そのホドホドに異様な様子から、妹思いの主人公は心配になって数時間で渡米。漢という男は行動で語るという良い見本。流石にモテるだけある。妹は世界レベルのランナーたちに太刀打ちできず、精神的に参ってしまっていたので、主人公は泣き落としで、彼女に帰国を迫る。「お前がいないと、妹モノだと思って買った新参者から編集部に文句が来ちゃいそうなんだ!」……ということでクライマックスでは妹帰還。次巻からはまたみんなのラヴリー妹が活躍しちゃうゾ!的なことになる、と思う。黒猫と妹と主人公の三角関係になるかと思うと楽しみ。あ、幼なじみは個人的に一〇年前のキャラクターの造形なのでどうでもよくって、むしろ渡米なり渡独なり渡亜なりの退場をして欲しいくらい好きじゃない。
読み終わると今回の悪ふざけっぽい、カバー中折りやウェブに載っている書籍説明が、意外や本編をちゃんと説明していて驚く。
「じゃあね、兄貴」──別れの言葉を告げ、俺のもとから旅立った桐乃。……別に寂しくなんかないけどな。ちゃんと黒猫の本名はわかるし、フラグは立てるし、前述の腐女子さんは能力ゆえ、黒猫に「魔眼遣い」と呼ばれてしまう。ついでに幼なじみは黒猫に《ベルフェゴール》とか呼ばれてたような。この遊びは上手いコトできているので、次巻からはSFかホラー仕立てでおねがいします!
新学期。平穏な高校生活を謳歌する俺のもとに、奇妙な後輩が現れる。「おはようございます、先輩」
俺は、黒猫(クロ)の人間としての真名を知り、より深い“絆”を築いていくことになる。“妹”と“親友”。ともに大きなものを失った二人は、数多の思想が渦巻く校内で、“魔眼(マガン)遣い”の少女と対峙する。
“稀少能力(レア・アビリティ)”を持つ少女に、俺と黒猫は圧倒され、異空間へと誘(いざな)われ……!!

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