2009年8月20日木曜日
H・G・ウエルズ『タイムマシン 他九篇』(橋本槇矩訳)
面白いし、特に『水晶の卵』、『マジック・ショップ』、『塀についた扉』、『盲人国』の幻想的な雰囲気は好きだけれど、後に残るモノがあんまりなくて刹那的すぎるような気もする。そういうわけで気楽に読めるのではあるけれど、そういう快楽を求めるならウエルズでなくてもいい。既にこのくらいのセンス・オブ・ワンダーは知ってしまっているから。
『タイム・マシン』:古典タイムトラベルもの。未来に行ったら案の定ディストピア。『夏への扉』よりも真面目なタイムスリップ論理で、冒頭の時間次元説明は上手い。この小説が書かれたのは特殊相対性理論が発表される前だから、時間次元の移動=時間次元の基本速度(光速=c)-三次元移動の距離(素人の簡単な計算モデルですから!)みたいなのは確率されてなかっただろうからこそ、簡単な説明で終わって、だからこそ時間次元の遡行が可能なんだろう。未来から帰ってきた男の伝聞を書き留めたという形式の文章で、その男の体験談自体はありがちでそんなに興味深くはないけれど、男とその話を聞く人たちの反応が楽しい。
『水晶の卵』:謎の卵形水晶を手に入れた骨董屋の話。ちょっとまじめな雰囲気の怪奇小説風味。短編なので詳しくは語られないけど、物語の裏に陰謀と秘密がありそうで魅力的な雰囲気が漂う。
『新加速剤』:知覚・運動能力を向上させる薬を開発して、自然に感じる速度との差を体験した二人の話。もうほんとうにそれだけの短編。
『奇跡を起こした男』:地球がほんとうに静止しちゃったコメディ。バカすぎて笑える。ネタバレが惜しいので語らないことにする。
『マジック・ショップ』:『水晶の卵』よりもちょっと不気味な雰囲気のファンタジィ。
『ザ・スター』:妖星と和訳されるらしい。『ディープ・インパクト』とかのスペクタクル系。ちょっといい感じに終わったかと思ったら最後が笑えるオチだった。
『奇妙な蘭』:あっさりすぎる怪奇小説。
『盲人国』:良き青空を!
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