2009年8月30日日曜日
ヴァン・ダイン『グリーン家殺人事件』(井上勇訳)
ガチガチのミステリーとしては堅実で好印象だけど、それ以外は別に……うーん、自分はもしかして純粋な推理小説にそこまでおもしろみを感じない性質なのかもしれない。アガサ・クリスティとかコナン・ドイルとかはおんもろーって思うのだけれど、それはどうにもトリック以外の部分で感じているのではないかしらん、などと仮定してみた。たとえばあの時代のイギリス、延いては欧州全体の雰囲気が感じられるところなどは、それだけでも魅力的ではあると思うのだが。当時の状況もそうだし、登場人物から察せられる思想や個人的な哲学(つまりアカデミックな、あるいはトラディッショナルな意味ではなく、小説で「なるほど、哲学者でいらっしゃる」みたいな意味での哲学)などもなかなか興味深い。
ヴァン・ダインは米国人であって、その為にこの小説の舞台もニューヨークなのだが、どうにも当時のニューヨークがどんな風であるのかいまいち想像できない。まあ一応、探偵ファイロ・ヴァンスが活躍する長編小説の第三巻であるので前巻にそういったことは書かれているのかもしれないが。それでトリック以外の部分を楽しむとなると結果として登場人物の話す言葉などに興味を惹かれざるおえないのだが、どうにもヴァンスは詩的に語りつつも唯物論的語りがお得意らしく、過去の事例を述べることに興味がおありのご様子。美しいものだと感じる上部構造ならばそれだけでもテクストは輝くのだが、そういうものでもなし。京極的に上部構造の形式化を図ってもらえたほうが、自分は楽しめるようだ。
というか最後に一言突っ込ませて!この表紙はないよなあ!
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